教師が耳を傾け、手を差し伸べる機会は何度もあった。第三者委員会は調査報告で、兵庫県尼崎市の中学2年の女子生徒=当時(13)=が発したSOSを学校側が何度も見逃し、自殺の数時間前には教員が理不尽な叱責を加え、追い詰めたと批判した。同市教育委員会の松本眞教育長は「いじめへの感度が低かった。本来は事前に防げたものであり、できなかった」とうなだれた。
女子生徒は自殺の1カ月以上前からアンケートで同級生からの嫌がらせが「時々ある」と回答。さらに、心の悩みを調査するアンケートで「すごく当てはまる」と回答していたが、担任は具体的には尋ねなかった。
ソフトテニス部の顧問は以前から部員間のトラブルを認識しながらも放置。部活では、部員間で陰口を言い合っていた。一部の部員は無料通信アプリ「LINE」に悪口を書き込んだり、「死ね」「うっとうしい」と暴言を繰り返し、いじめはエスカレートした。
自殺の2日前、部活のトラブルがあり、学校側は事態収束のため口外しないよう部員を指導。後日、女子生徒が「(別の生徒が)かわいそう」と擁護すると、別の教諭は「言いふらした」と誤解し、激しく一方的に叱った。女子生徒は「伝えたいことがある」と申し出たが、聞いてもらえなかったという。
「なんで私ばっかり」。女子生徒はトイレの個室にこもって泣いた後、帰宅して命を絶った。
調査報告は、女子生徒が精神的苦痛と孤立を感じ、最終的には「自分自身を否定され、学校そのものに絶望した」と断じた。
松本教育長は、第三者委から「女子生徒が亡くなる理由がはっきりある」と告げられたという。「教員が気付き、対応できなかった。学校の危機管理体制を抜本的に強化する」と頭を下げた。(井上 駿)
